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城に入る東門は、豪壮というべきである。

今は弘前城も、桜の花が最後の時期に来ていた。

城内の桜は、散り花を地面に敷いて、今日あたりが最後の見どころと言うべきであった。

先週のゴールデンウィークには、恒例のさくらまつりが弘前城であった。

その時には、今と違ってさぞかし人だかりだったのであろう。

今日は、平日の昼ということもあって、桜の花を見る人影はほとんどいなかった。まだこれだけ花があるのに静かなもので、客のいない桜並木にかえって決まりが悪い心地がした。

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だが弘前城は、桜がなくても十分によい。

堀は深く、緑は豊かで、門と櫓は江戸時代の遺跡をまだ残している。日本の建築美として、総合的に一級のランクであろう。

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中堀を渡って、二の丸に入る東内門。

弘前城は外堀・中堀・内堀を三重に巡らして、本丸の前に二の丸三の丸を配置する。安土桃山時代の平城の、典型的なプランである。

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二の丸から、天主を見る。

建物と石垣と木々とのバランスが、見事である。

日本の城や寺院は、東アジアの建築の中で最も美しいと、私は思う。

韓国の歴史的建造物は、残念ながら個性に乏しい。中央集権国家であった李氏朝鮮王朝の建築は画一的で、ソウルでも釜山でも全州でも、周辺の自然は別として建物そのものの魅力はあまり感じなかった。台湾の仏教や道教の寺院は、じつに華やかに飾り付けられている。とても明るい建築であって、それもまあ悪くはない。しかし、緑を取り込んで落ち着いた景観を見せる日本の建築は、やはりすばらしい芸術である。

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この弘前城天守は、文化七年(1810)に、九代藩主津軽寧親がさきに述べた蝦夷地警備の功績を認められて、幕府から許されて再建したものであるという。近代の再建ではない、現代では日本の中でも貴重な歴史的天守である。

天守の中に入って、最上階まで登った。

外を眺めたが、窓から見えたものは城の前の木々ばかりであり、岩木山は隠れてよく見えなかった。岩木山は、城の上から見るものではないようだ。

(小田 光男)