蝋梅碑の向こう側を見渡せば、松島湾が開けていた。
まことに、風光明媚というべきであった。
古樹あり、古社あり、海あり、そして歴史あり。
様々な文物が、松の盆栽のように狭い一角に詰まっている。
この塩竃神社をみて廻ると、日本という文化は本当に盆栽のようだ、という私の思いが新たになる。
カナダやモンゴルのように、大自然の雄大さをそのままに味わうわけではない。
欧米のリゾート地のように、観光客のために徹底的に景観が作りかえられているわけでもない。
アジアの国の日常的な風景の中に、点のように由緒があって磨かれた美的景観が、そこだけ存在している。深入りすれば非常に興味深いのであるが、一見しただけではそのよさが伝わりにくい憾みがある。
記念とでもいうか、漢詩を残しておこう。
例によって、上手でもなんでもないが。
壬辰年獨進林子平子碑前而立
六無齋子愛蘭梅
五弁夭夭竈社花
三方廻首下洋豁
合手追思曷夢遮
壬辰の年、獨り林子平子の碑前に進みて立つ
六無齋子 蘭梅を愛す
五弁夭夭たる 竈社(そうしゃ)の花
三方首を廻らして 下に洋(うみ)豁(ひら)く
手を合わせて追思す 曷(なんぞ)夢を遮らん
塩竃神社を、後にした。
(小田 光男)
No comments yet. You should be kind and add one!
Our apologies, you must be logged in to post a comment.